総合コース 兵庫学入門 「分権化時代の市・町長像」 11/14&21/2003 山田真裕(関西学院大学法学部助教授) 0.このレジュメはhttp://members.tripod.com/~myamadakgにあります. 1.制度から見た市・町長 1.1.歴史: 戦前:内務省による任命制  第2次世界大戦終了後:GHQ(占領軍総司令部 General HeadQuarter)統治下で,知 事.市町村長,地方議会議員,国会の定める地方役員は,直接普通選挙で選ばれること となる.   住民(選挙民)は,知事・市町村長・議員の解職請求権(リコール),議会の解散請  求権をもつようになった.  日本国憲法制定→地方自治法   1947年4月5,30日に第1回統一地方選挙執行 1.2.政治制度としての市町村長:大統領的存在  日本国憲法下の日本国の政治制度:議院内閣制(parliamentary system)   有権者→選出→国会議員(立法府)→選出→内閣(行政府,執政府ともいう)    日本国憲法下の地方政治制度:二元代表制(大統領制(presidential system)的)   有権者→選出→議員(立法府)    ↓    選出    ↓   首長(知事,市町村長) 1.3.日本の単一制(Unitary System in Japan)    単一制:地方政府の法的根拠が,中央政府によって作られた法律にある制度.      地方政府は中央政府によって生み出され,中央政府に従属する.   日本の地方自治体は,日本の国会が定めた地方自治法によって生み出された. 世界に存在する国の大多数は単一制  単一制と正反対の制度:連合制(confederal system) 地方政府間の協定によって,中央政府が作り出される.   実例:連邦制移行前のアメリカやスイス  単一制と連合制の中間的制度:連邦制(federal system)   互いに対等な中央政府と地方政府が憲法によってお互いの権限を規定する政治体制 実例:アメリカ,カナダ,ドイツ,インド,メキシコなど10数カ国 2.兵庫県の市町長についての分析(別表 from 教科書:pp.72-4,76-7,80参照) 3.地方分権改革において市町長に求められるもの  2004年4月施行の「地方分権一括法(地方分権整備法)」制定  →上からの分権改革(行財政改革のための分権)  以上のような状況で市町長には何が求められるか?  @先見性と開明性  A人的ネットワーク  B交渉能力  C応答責任(アカウンタビリティ accountability) D異質なアイディアに対する許容性  以上の要素は日本の伝統的村落共同体社会においては獲得しにくい  ・タテ社会 ・相互理解が深い分,異質な他者の存在やアイディアに対して鈍感  ・閉鎖性が新しい関係の構築を妨げる  「前工業的な農業社会は,通例,土地の所有者であり軍事的機能を果たす貴族もしくは 聖職者エリートによって支配されている.そして両者が慣れ親しんでいる社会環境は, 一連の階層的命令構造に基礎をおく.それに比べると,商業エリートは,取引に慣れる ほかはない.(中略)このように商業エリートは,人々への通常の対し方として,階層 的な権威よりもむしろ同等な人々の間での取引をより受け入れる.この習慣と技能は議 会制民主主義の特徴ともいえる取引を,命令よりも重視する態度につながる」  (Inglehart [1990=1993:52-3]) 「人が信頼できるのが個人的な知り合いのみである場合も伝統的社会は存続し続けうる が,現代社会は人々が見知らぬ人を敵と思い込まないときにのみ機能しうる」  (Inglehart[1990=1993: 28])  経営的視点と快適なコミュニティの再構築と運営が市町長に要求されている. 4.レポート課題(11月21日発表)