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歴史教育などといふもの(12月の雨の日) 12月14日(金)

 いやー,やっと校正を終えることができました.関係者の皆様に心からのお詫びと
感謝をささげます.雨交じりの霙が降る中,郵便局へ行きExpress Mailでゲラを送
ってから,1人で遅い昼食かたがた祝杯をあげました(昼間のビールってうまいです
ね^o^).
 校正作業中に後輩の森裕城君 から彼の著書が送られてきました.『日本社会党の
研究−路線転換の政治過程−』木鐸社,がそれです.近年,社会党研究には若い
研究者の参入(立教大学の中北浩爾さん,東京大学社会科学研究所の三浦まりさん
などなど)が目立ちますが,彼もこの著書でおおっぴらにその仲間入りを果たしたこと
になります.ぐーたらな僕と違って勤勉な彼.今後もいい研究を続けることでしょう.
 ああ,友が皆、我より偉く見ゆる日よ.なーんて言ってないで私も頑張らねば.

 昨日,校正に疲れた合間にJob Talkというのをのぞいてきました.こちらでは,就職
希望の研究者が自分の研究をオープンな場でスタッフや院生の前でしゃべるんです
ね.どうもそれで採用・不採用を決めるらしい.
 テーマは第2次世界大戦後の日本とドイツにおける歴史教育の比較で,報告者は
日本と東西ドイツにおける中学生の歴史教科書を読んで,それぞれの国が第2次世
界大戦における全体主義の経験を中学生にどう教えるかを,政策アリーナのあり方
の相違も含めて分析していました.報告者によれば,ドイツがナチズムの発生をなん
らかの原因(ヒトラーの存在や社会状況)に還元した説明を中学生に提示しているの
に対して,日本はchronicleだけで説明を与えない教育であると.
 これはまあ自分たちが受けた教育を顧みて明らかにそうですね.教育現場で日本
史を教える先生方のご努力を認めるに吝かではありませんが,受験生の大多数が
「歴史科目=暗記科目」というステレオ・タイプをもっています.だって入試問題自体
暗記のほうが点を取りやすいわけだから.
 結果的に,戦中の日本はなぜ軍国主義が支配したのでしょうか?と聞かれて答え
られる日本の大学生はマレ(だからこそ大嶽秀夫,鴨武彦.曽根泰教『政治学』有斐
閣,1996年の日本における戦後改革を分析した図が生きるわけですね).
 なんかJob Talk聞いてて恥ずかしかったですね,日本人として.日本は過去の過ち
を反省していますって,一体何を反省しているんでしょうね?負け戦?だったら今度
は勝てるようにやればいいわけですよね.軍国主義支配?だったらなぜ軍国主義支
配を日本人は許したのか,ということが問われなければならないですよね.なんでそ
れをやらないんでしょうね?(これ以上のつっこみは省略)

 報告者の比較は教育内容だけでなく,教育の中味を決める政策アリーナにも及ん
でいました.東ドイツは党幹部が教育内容を決めるんですね.で,西ドイツはというと,
少なくとも歴史に関する限りは教員や学会が決めるんだそうです.日本はっていうとま
あ文部省ってことになりますね.もちろん,「新しい歴史教科書」ってやつで明らかな通
り,文部省は教科書を検定するだけで,検定に合格した教科書の選択自体は学校に
ゆだねられていますね.でも文部省は「学習指導要領」ってやつをだして,教科書の
使い方まで含めて実際の教育の中味についてもいろいろ指導しますから,実質的に
は文部省が教育内容をコントロールしているといっても過言ではない.で,これに日
教組などが反発したりもしていたけれど,,,と.
 ということは,日本の歴史は暗記科目で,そこで習う出来事に「なぜ?」という疑問を
持たない学生を大量生産しているのは文部省の政策である,ということになりますね.
もちろん教科書の内容とくに第2次世界大戦をどう教えるかをめぐっては,日本国内に
大きなイデオロギー対立があり,それゆえに軍国主義の発生を巡る因果関係の分析
を中学生に提示することが難しいことは,大嶽秀夫, Leonard Schoppa  などの研究
者によって明らかにされています.
 つまりいずれにせよ,われわれ日本人は,自分たちの第2次世界大戦における敗北
や,日本にとって第2次世界大戦とは何であったかを考える人間を少なくともフォー
マルな義務教育システムでは育てることができない(もちろん自分でそういう問題意
識を持ってしまう人間がマレに発生することを妨げるものではないし,そういう人間が
自分の関心に基づいて情報を収集・分析することはありうるわけですが).これを嘆か
ずして何を嘆くか、という気になりません?

 でまあ義務教育でできないなら,高等教育でやるしかあんめいということになるわけ
ですが,そうやって大学に入ってきた学生さんたち,相変わらず政治学も暗記か,さ
もなくば床屋政談ですまそうとするんですな.そりゃそうだ.1回そうしてアタマに楽を
させることをおぼえてしまったんだもの.一生懸命やったからっていいとこに就職でき
るわけでなし.そんなことマジメに考えるのは一部のスキモノのやること.ということで
合理的無知を決め込んで卒業に単位だけ何とか楽にもらえんかな?となるのはまさ
に合理的選択というもの.大卒でさえそうなんだから他は推して知るべし.かくして
何を反省していいんだかよくわからない大量の大人と,「へー,日本も戦争してたんだ
あ.アメリカとぉ?バッカじゃないの。勝てるわけないじゃん」というinnocentなboys&girls
で社会はあふれるのでありました.メデタシメデタシ?

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